個性的なドイツブランドの魅力……ファッション編
みなさんは、ファッションブランドというと何を思い出しますか?エルメス、シャネル、ルイヴィトン、グッチ、プラダ、ディオール、バーバリー……まずはこのあたりの、フランス、イタリア、イギリスブランドが多いのではないでしょうか。残念ながら、ドイツのファションブランドを挙げる人はあまりいません。
しかし、あのシャネルのチーフ・デザイナーを歴任しているカール・ラガーフェルドは、何とドイツ人なのですよ!
カール・ラガーフェルドは1933年にドイツのハンブルクに生まれ、14歳でパリに移住。オートクチュール組合が経営する洋裁学校で服飾を学びました。17歳からピエール・バルマンのアシスタントを始め、その後、ジャン・パトウのディレクターを務めた後、クロエのヘッドデザイナーで認められ、65年にフェンディ、83年にシャネルのデザイナーに就任しています。
85年に自身のブランド『カール・ラガーフェルド』をスタート。これは2005年にトミー・フィルフィガーに売却してしまいましたが、シャネルでは今でも元気に活躍しており、2008年には、TIME誌が選ぶ『最も影響力がある100人』に、ファッションデザイナーとしてただ一人選ばれています。
彼は、ストリート・ファッションをエレガントに表現する名手として有名です。その斬新な手法や身体を締め付けない着やすい服作り故に、『重ね着の魔術師』などと呼ばれています。
もうひとり、ドイツのファッション業界を牽引しているデザイナーとして挙げられるのが、ジル・サンダー。彼女は1943年に、ラガーフェルドと同じハンブルクに生まれています。ニューヨークでファッション誌のジャーナリストを経験した後、68年にハンブルクでブティックを経営しながら自分でもデザインを始めました。
彼女のデザインコンセプトは『装飾なきデザイン』。内面の美しさを表現するには、装飾のないシンプルさが必要で、そのためには素材やカット、ディテールへのこだわりが重要という考え方です。彼女は、オーストリアのデザイナー、ヘルムート・ラングと共に90年代以降のミニマルなデザインが高く評価された時代を代表するデザイナーと言えるでしょう。
こんな、個性的なデザイナーが注目を浴びている一方で、伝統的なクラシック・ブランドとして世界的に認められたブランドも、ドイツにはたくさんあります。
『AIGNER(アイグナー)』『ESCADA(エスカーダ)』『MCM』『HUGO BOSS(ヒューゴ・ボス)』などは、皆さんにもお馴染みですね。
『AIGNER』は、1965年にエチエンヌ・アイグナーがミュンヘンに設立した、レザーアイテムに定評のある最高級ブランドです。アイグナーのイニシャルの「A」と、馬の蹄鉄を組み合わせたブランドマークがシンボル。クラフトマンシップを守り、最高品質のレザーを使用。革の断面が表に出たオープンエッジ仕上げのアンティークレッドの製品は、その美しさから「アイグナーレッド」と呼ばれています。
『ESCADA』は、ミュンヘンに拠点を置くヨーロッパを代表するファッションブランド。1976年、ウォルフガング・ライとパリ・コレクションのモデルだったスウェーデン出身のマルガレッタが、上流階級が集う競馬場で同じ馬に賭けて勝利したことがきっかけで結婚し、ブランドを設立しました。そのときの馬の名前が「ESCADA」(ポルトガル語で「階段」の意味)だったとか。
ウォルフガングがビジネスを、マルガレッタがデザインを担当し、上流階級にふさわしいクチュール仕立てのプレタポルテ・コレクションを発表。モダンエレガンス、クールグラマラスといった女性らしさをコンセプトにしており、そのドレスは、キム・べーシンガーやデミ・ムーアなどのハリウッドセレブに愛されています。
『MCM』は80年代に日本でも一世を風靡したバッグのブランドで、今年日本に再上陸し、4月25日銀座に直営店がオープンしたことで話題になっていますね。もともとは、俳優のMichael Cromer(マイケル・クローマー)が、自分がイメージしたバッグがどこにもないことから、1つの型のバッグを制作、それを友人の女優に贈ったところ女優仲間で評判になり、1976年にミュンヘンで創業したということです。
MCMは「Michael Cromer Munich」の略。このロゴをデザインしたバッグは、一時期街中に溢れていましたね。今では、ビヨンセやジャスティン・ビーバーなどのセレブ御用達となっています。
『HUGO BOSS』は、ヒューゴ・フェルナント・ボスが1923年にメッツィンゲンに創立した紳士服のブランドです。60年代に初の既成スーツを発表して以来、ヨーロッパのみならず、世界的な一流メンズブランドとしての地位を確立しました。現在は、レディスウエア、キッズウエアも揃い、昨年、ジェイソン・ウーがデザイン・ディレクターに就任して、ますます期待されています。
以上、ドイツを代表するデザイナーやブランドをご紹介しましたが、ここで忘れてはならないのが、スポーツブランド。そう、誰でも知っているあの『adidas(アディダス)』と『PUMA(プーマ)』です。
創設者は、アドルフとルドルフのダスラー兄弟。二人は靴工房を運営していた父親の影響で靴職人の修行を始め、1920年にダスラー兄弟会社を設立。紐の代わりにゴムが付いた革底の体育館シューズを開発して一躍注目を浴びますが、1949年に兄弟げんかによって分裂し、アドルフは『adidas』、ルドルフは『RUDA(ルーダ)』を設立します。そして『RUDA』は『PUMA』にブランド名を変更しました。
『adidas』は、テニス・シューズの『スタンスミス』、オールレザーのバスケットシューズ『SUPERSTAR』などを発表してトップブランドに登り詰め、『PUMA』は、アレキサンダー・マックイーンやミハラヤスヒロ、ニールバレットなどのファッションデザイナーとのコラボを積極的に行うなど、いずれもスポーツ関連ブランドとして君臨しています。
なお、大衆的なカジュアルウエアでは、衣料品量販店の『C&A』があります。日本で言えば、ユニクロのようなショップです。ドイツ国内に約400店舗展開しており、ヨーロッパ全体で約1200の店舗があるそう。ドイツの街を歩いていると、必ず目にとまりますよ。
以上、今回はファッションに絞ってドイツのブランドをご紹介しましたが、ドイツと言えば、そのキーワードは「機能性」「合理性」「質実剛健」。
これらの精神が光ったブランドとして、シューズの『Dr.Martens(ドクター・マーチン)』『BIRKENSTOCK(ビルケンシュトック)』、スーツケースの『RIMOWA(リモワ)』、万年筆の『MONT BLANC(モンブラン)』などが有名です。
詳しい話は次回をお楽しみに!