森の国ドイツが生んだ、絶妙のワインを楽しもう! その1
ドイツといえばビール……いえいえ、忘れてはならないのが、森の国ドイツが生んだ世界一と称される『白ワイン』です。
ドイツワインは、北緯52度というブドウ栽培の北限上に生産地があり、寒冷で日照時間が少ないため、フランスやイタリアなどのヨーロッパ南部のワインに比べて酸味が多いのが特徴です。13の主要栽培地域がありますが、それらは全て国の南部に位置しており、栽培されるブドウ品種は、85%が白ブドウ、15%が黒ブドウ。白ブドウが圧倒的に多いのは、陽射しが弱いためブドウが色づかないからです。
この酸の多いブドウからおいしいワインを造り上げるため、ドイツのワイン生産者達は、長年知恵を絞ってきました。酸とのバランスを取りながら、アルコールに変化するのに必要な糖度を調整するために、ブドウの摘み取り時期を遅らせるなど、ドイツ独自の製法を編み出してきたのです。
ハンディをものともせず、自然条件を克服して世界一と言われる白ワインを造り上げたドイツのワイナリー魂、素晴らしいと思いませんか?
古くローマ時代から醸造が始められたとされるドイツワイン。最も多く栽培されているのが、リースリングとグートエーデルの交配種であるミュラー・トゥルガウ、それにドイツワインを代表する品種のリースリング、そしてシルヴァーナ、ケルナーと、上位は全て白ワイン用の品種が占めています。
赤ワイン用としては、フランスのピノ・ノワールと同種のシュペートブルグンダーが最も多く、それにポルトギーザー種が続きます。
ドイツの赤ワインは色が薄めで、渋みも少なく、酸味とのバランスを楽しむためにやや低温で味わうのがオススメです。
13ある生産地域の内、世界的な銘醸ワインを生む2大産地が、モーゼル・ザール・ルーヴァーとラインガウです。モーゼル・ザール・ルーヴァーは、ザール川とルーヴァー川がモーゼル川に流れ込む、トリアー市のエリアです。
トリアー市はドイツワインの中心と言っても過言でなく、ドイツ全土の生産量では4位ですが、日本に輸入されているドイツワインの種類と本数は、この地域のものが他の地域とは比較にならないほど多いのです。それもそのはず、華やかでフルーティな香り、繊細な酸味は正に日本人の好みにピッタリ!
日本では、ドイツでも大衆ワインとして名高い、ラベルに黒猫の描かれた「シェラー・シュバルツェ・カッツ」の人気が高いようですね。ちなみに、“シュバルツェ・カッツ”は“黒猫”の意味。
ラインガウは、ライン川の北側の地域で、ドイツのワイン生産地としては珍しく、太陽の恵みをタップリ受けているのが特徴です。リースリング種が80%を占めており、高級志向のワインが生み出されていることで有名。フルーティなブーケが香る、力強くしっかりした酸味が特徴です。
由緒あるドイツ三大銘柄のひとつである偉大なワイン「シュロス・ヨハネスベルガー」もこの産地のもの。
他の産地もいくつか見てみましょう。
栽培面積2万5000haと、ドイツワインの4分の1を占め産出量第1位を誇るラインヘッセン。ライン川の南側の地域です。
ここのワインは全体としてマイルドでソフトなのが特徴です。中でも、輸出量の約5割を占めるのが「聖母の乳」と訳される「リープフラウミルヒ」。ほんのりと甘いのが特徴です。
ドイツワイン生産地域の内、最も東に位置するのがフランケン。
ここのワインの特徴は何と言ってもボトルの形です。ボックスボルテイル型と呼ばれる扁平で丸い、あまりスマートとは言えないボトルに入っています。
フランケン地方のワインは、全体的に甘さを控えた辛口に仕上がっていて、力強く男性的。「テュンガースハイマー・シュルラッハベルグ」などが有名です。
では、今回最後に、ドイツワインのラベルの読み方をお教えしましょう!
ドイツワインのラベルには、他の国のワインと違って、ワインに関する多くの情報が明記されているんですよ。花文字でデコレーションされていたりして、ちょっと読みづらいですが、慣れればかなりのワイン通をアピールすることができます。
まず、ドイツのワインには、QmP(クー・ベー・アー)を頂点とした格付けがあり、下のラベルは、記載事項の最も多い、最高ランクのQmPのものです。このラベルが読めれば、他のランクのものも読めるはずです。
法律によって規定されたQmPワインの最低記載事項は9項目です。
①栽培地域名 ②QmP(格付け)の明記 ③肩書き(ブドウの品種や味の傾向) ④瓶詰め人の名前 ⑤瓶詰め元の所在地 ⑥APナンバー(公認検定番号) ⑦容量 ⑧村名 ⑨畑名
⑧村名⑨畑名は、生産地域名(ベライヒ名)で記載されたものもありますが、日本に輸入されているドイツワインのほとんどが、村名と畑名を表記したものになっているようです。
この他に、ブドウの品種名やアルコール度数などがありますが、これらは全て任意の記載事項なので、記載は義務づけられていません。
さあ、さっそくお近くのワインショップに、好みのドイツワインを探しに行ってはいかがですか?
次回は、モーゼル・ザール・ルーヴァー地方のワインシャトーをレポートします。
レポート・文 前川 みやこ(コラムニスト・ライフスタイルアドバイザー) 写真提供:OFFICE SHIBA Inc.