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Wunderbares Deutschland ~素晴らしきドイツ~ ― RUF本国ドイツの文化をお届けする連載コラム ―

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オーガニック大国ドイツのこだわり その1

レポート・文 前川 みやこ(コラムニスト・ライフスタイルアドバイザー)

日本ではここ数年、食品や化粧品を中心にオーガニックが大ブームですね。農薬などの化学物質を排除した農作物にこだわり、自然にも健康にも配慮した生活を見直そう……そんな考え方が、意識されるようになった結果でしょう。


▲EU規則に定められた基準を満たした食品に与えられる「BIOマーク」

ドイツは、世界でもいち早くオーガニックに着目し、オーガニック大国と呼ばれるくらい、社会や個人にオーガニックの商品が浸透しています。街のショッピングセンターや百貨店に行くと目につくのは、緑色の六角形の囲みの中に「Bio」と書かれたマーク。
「Bio」とは「有機的な」という意味のドイツ語で、英語の「Organic」と同じです。2001年に誕生したこのマークは、連邦政府が認定するオーガニック認証の統一規格で、オーガニック製品と認定されたものには、全てこの「Bio」マークが付いているのです。
食品売り場に「Bio」コーナーを設けている店もたくさんあります。

また、毎年2月にはヨーロッパ最大規模のオーガニック専門展示会『BioFach(ビオファ)』が、ニュルンベルクで開催され、参加者約4万人という賑わい振りです。会場にはオーガニック食品や原料、加工機材の他、オーガニックコスメのブランドも合わせて約2500社が出展し、その半分以上が、開催国であるドイツの会社だそうです。
『BioFach』は現在では世界6都市で開催され、日本でも2001年の「有機JAS」施行と共に開催されるようになりました。2010年には18カ国256社が出展し、17,000人以上が来場しています。


▲2013年ドイツニュルンベルクで開催された『BioFach(ビオファ)』。

▲『BioFach(ビオファ)』には多くのオーガニック食品や原料が展示される。

ドイツでオーガニック業界がこれほど発展した理由は、自然や健康に配慮するという価値観が人々の心に浸透しているからに他なりませんが、根付くまでには、やはり1世紀ほどの時間を要しています。

第一次世界大戦後のドイツは、それまでのリン酸系・窒素系の化学肥料の多用により、土壌の状態から作物の質、家畜の健康に至るまで最悪の状況でした。そこで、1800年代後半から始まった改善運動を継承するReformhaus(レフォルムハウス)が、無添加の自然食品などの販売を通じて食生活の改善を推進。また、人智学の創始者であるシュタイナー博士は、自然の摂理に従って農業を営み、作物本来のもつ生命力を最大限に引き出す新しい農法を提唱しました。
このバイオダイナミック農法をDemeter(デメター)という団体が実践し、この2つの啓蒙運動により、健康にこだわる特定層を中心に少しずつ広まっていったのです。

それが一気に拡大化したのは、2000年の暮れに世界を脅かした狂牛病の問題がきっかけでした。食の安全に対する関心は、一部の特定層に限られたものではなくなったわけです。その結果、2001年には「Bio」マークによる認定制度ができ、生産者の中に「すぐに利益を上げるよりも、正しいと思うことを行っていく」という意識が、信念として生まれたわけです。
もちろん消費者の中にも、オーガニック製品=安全という価値観が生まれました。しかし、当時のオーガニック製品は、通常のものよりも価格が平均して40〜50%も高く、富裕層や有識者は率先してオーガニック製品に切り替えたものの、一般消費者は買い控えということに留まりました。食品でさえそういう状況だったのですから、オーガニックコスメや衣料品など購入するわけがありません。
その価格差の壁が破られたのは、2007年のことでした。

1997年に創立したオーガニック・スーパーマーケットの『Basic(ベーシック)』は、1998年にミュンヘン市中央部のビクトアーリエン市場近くに第1号店を出店し、「オーガニックの食物を全ての人に」をモットーに、その輪を拡げ、2007年にはドイツ全土とオーストリアに28店舗を展開。ドイツで最大のオーガニックスーパーチェーンになりました。しかし、コストがかかるため、価格はかなり高め。

ところが、激安スーパーチェーンの『ALDI(アルディ)』が2007年頃から生鮮野菜にオーガニックのものを導入し、同じ激安スーパーチェーンの『Liedel(リーデル)』もこれにならい、その他のスーパーやディスカウントストア、ドラッグストアといった量販店もこの流れに乗って、一気にこのオーガニック市場に参入し始めたのです。
当然価格競争が始まり、量販店も手頃な価格のプライベート・ブランドをOEMで企画販売するようになり、基準は低いけれど認定を受けたオーガニック商品を、一般の消費者も積極的に試し買いするようになったのです。


▲オーガニックスーパー『Basic(ベーシック)』のWEBサイト。http://www.basic-bio-genuss-fuer-alle.de/

▲激安スーパーチェーン『ALDI(アルディ)』のWEBサイト。
http://www.aldi-nord.de/

それ以降、経済的には決して上向きではない状況のヨーロッパの中で、ドイツのオーガニック市場は確実な伸びを見せ、食品だけでなく、コスメに至るまで消費者の中に定着していきました。
現在では、ドイツの94%の世帯がオーガニック製品を購入するようになったそうです。

ドイツのオーガニック市場が他の国に比べていち早く定着したのには、ドイツ人の自然に対する考え方があります。
ドイツはどの大都市にも、その外れに大きな森があり、人々は昔から森に親しみ、自然と共存しながら生活してきました。ドイツ人の祖先であるゲルマン民族は「森の民」と呼ばれ、森はドイツ人の生活そのものと言っても過言ではありません。自然を尊重し、愛する心が、そのまま自然本来のあり方を大切にする考え方に息づいているのでしょう。

ドイツの消費者に「なぜオーガニック製品を買うのか?」というアンケートを取ったところ、いちばん多かった回答が「家畜が正当な扱いを受けているから」(89%)で、「体に有害な物質をできるだけ避けたいから」(86%)を上回っていたそうです。その他にも、「環境保護のため」(82%)なども上位にあり、食べること、生活することの安全・安心以上に、自分たちを取り巻く環境そのものを守り、共存していくという考え方があるのだなあと、あらためて感じました。
エコやオーガニックというものへのこだわりは、ドイツ人の生き方そのものなのでしょう。

次回は、実際に人気の高いオーガニック食品や、日本でも話題のドイツ発のオーガニックコスメブランドなどについてお話します。

(次号に続く)

写真提供:OFFICE SHIBA Inc.

前川みやこ(Miyako Maekawa) PROFOLE コラムニスト、ライフスタイルアドバイザー

早稲田大学法学部卒。ライター、コラムニストとして小学館発行の女性誌『CanCam』『Oggi』などで創刊当初より多くの連載を持つ。2008年よりインターネット上でのコラムニスト、ライフスタイルアドバイザーとして活躍。ライブドアニュース『独女通信』などの辛口コメントで人気となる。著書に『言葉の毒』(アマゾン、紀伊国屋、SONYストア他より電子出版)があり、現在第2冊目を著作中。2013年春より「リーン・ロゼ」ブランド・アンバサダーとして活動。人気ブログ『みやこのこのみ』を公開中。2013 年8月『ことばの毒』を出版。アマゾン、その他の書店で発売中。

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