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寒い冬を吹き飛ばせ! ファッシングで大騒ぎ その1

レポート・文 前川 みやこ(コラムニスト・ライフスタイルアドバイザー)

▲ ケルンの「ファッシング」 Photo: J. Badura

幻想的な『クリスマスマーケット』、大晦日と華やかな行事を終えて新年を迎えると、ドイツの冬は本格的な寒さを迎えます。そんな厳しい冬を吹き飛ばすかのように1月から2月にかけて開催されるのが、キリスト教カトリックのお祭り『ファッシング』です。(『ファスナハト』と呼ぶ地域もあります)
聞き慣れない言葉ですが、日本では『謝肉祭』、ライン河畔では『カーニバル』……と言えばもうおわかりですね。そう、リオのカーニバルや、ベニスのカルナバーレでもお馴染みの、人々が華やかな衣装を身に着け仮装、歌い踊りながらパレードをして大騒ぎする大イベントです。ミュンヘンやケルンなどの南ドイツ地方では、これを『ファッシング』と呼んでいます。

キリストが復活する日・イースター(復活祭)の46日前を『灰の水曜日』といい、その前の6日間が『ファッシング』の期間となります。もともと、灰の水曜日から復活祭までの期間は、キリストのことを想い、肉を断って慎ましく過ごさなければならならないとされています。そのため、灰の水曜日の前に、美味しいものを思いっきり食べて大騒ぎをしておこう、というのがカーニバル=ファッシングの意味なのです。

ファッシングの期間をドイツでは『狂騒の日々』なんて言うくらいですから。

▲ ケルンの「ファッシング」 Photo: J. Badura
▲ デユッセルドルフの「ファッシング」

ファッシングは灰の水曜日の前の週の木曜日から始まります。
ファッシングの最も盛んなデュッセルドルフ、ケルン、マインツなどのラインラント地方では、この日は『女のファッシング』と呼ばれています。女性が主導権を握り、何をしてもいいというご機嫌な(!)日。なんと、会社では女性社員が男性社員のネクタイを、はさみで切って回る習慣があるんですよ。普段、飲んで騒ぐのは男性ばかりで、女性は家で家事に追われてばかり……ということに反発して、男のファッションの象徴であるネクタイを切るのだとか。この日ばかりは、社長ですら用心しなければなりません。日頃ダンディな方も、絶対にお気に入りの高価なネクタイはしていかないように……。

他の地方では、初日の木曜日を『汚れた木曜日』と呼びます。断食や肉断ちの前の1週間を大いに食べて飲んで過ごすため、家畜を処理する日だったことからだとか。
そして、翌日の金曜日は『煤だらけの金曜日』と言われます。これは、子供達が顔に煤を塗るという古い風習から来ているのですが、今は、子供達が顔に思い思いのペインティングをして登校するようです。学校でもこんなことが許されてしまうなんて、ご機嫌だと思いませんか?男も女も、大人も子供も、ファッシングを思いっきり楽しんでいるのですね。

土曜日から本格的なイベントやパレードの始まりです。街の熱気はどんどん高まり、お祭り騒ぎがハイライトを迎えるのが月曜日。『薔薇の月曜日』と呼ばれます。大規模なパレードが行われ、仮装したり伝統的な民族衣装や仮面を付けて、ファスナハトは最高潮!
ドイツで初めて『薔薇の月曜日』のパレードが行われたのは1823年、ケルンでした。その2年後の1825年にはデュッセルドルフ、1936年にマインツが続き、ラインラント地方の三大祭りになっています。
ケルンでは1823年に「祝祭管理委員会」が設立され、独特のカーニバルのスタイルが確立されました。ナポレオン時代の護衛部隊の衣装を着て歌い踊る一団がパレードを彩ります。色鮮やかな軍服は、冬枯れた街に色彩と元気を与えてくれます。

人々は紙吹雪やキャンディが降り注ぐ中、だれかれ構わず「アラーフ!」と叫び声を上げます。これがケルンのファッシングの合い言葉。数キロに渡る仮装パレードが街を練り歩き、道路沿いには数百万人の人が出て、肩を組み、歌い踊ります。

▲ テューピンゲンの「ファッシング」
▲ ミュンヘンの「ファッシング」

デュッセルドルフのカーニバルの起源は、中世の騎士の競技や、宮廷での仮装パーティ。ホッペディッツと呼ばれる宮廷道化師の仮装がメインとなります。紙で作った丸い鼻を付け、ピエロの帽子をかぶって、路上で誰とでもキス。この街の合い言葉は「ヘラーウ!」です。
マインツのファッシングの歴史は、16世紀にさかのぼります。当時は、ただ羽目を外した雑多なお祭りだったのですが、1838年にマインツ・カーニバル協会が創設されて、秩序のある美しいお祭りに生まれ変わりました。
護衛部隊や青少年の仮面パレード、道化師のパレードなどで賑わいます。人口約20万人のマインツの街が、パレードの見物人だけでも55万人以上にふくれ上がるそうです。

ファッシングのハイライトが火曜日になる街もあり、火曜日は『ファッシングの火曜日』と呼ばれます。そして、羽目を外した日々が終わり、『灰の水曜日』からイースターまでの断食期間が始まるのです。
実際に断食まではいきませんが、ドイツでは『我慢の7週間』と呼ばれるこの期間中、お菓子やアルコール、テレビやゲームを我慢する人がたくさんいます。だからこそ、ファスナハトの6日間は、思いっきり楽しもう!熱狂と礼節……メリハリのある冬が、今ドイツに訪れています。

次回は、地方色豊かなファッシングとこの時期ならではのお菓子をご紹介します。

(次号に続く)

写真提供:OFFICE SHIBA Inc.

前川みやこ(Miyako Maekawa) PROFOLE コラムニスト、ライフスタイルアドバイザー

早稲田大学法学部卒。ライター、コラムニストとして小学館発行の女性誌『CanCam』『Oggi』などで創刊当初より多くの連載を持つ。2008年よりインターネット上でのコラムニスト、ライフスタイルアドバイザーとして活躍。ライブドアニュース『独女通信』などの辛口コメントで人気となる。著書に『言葉の毒』(アマゾン、紀伊国屋、SONYストア他より電子出版)があり、現在第2冊目を著作中。2013年春より「リーン・ロゼ」ブランド・アンバサダーとして活動。人気ブログ『みやこのこのみ』を公開中。2013 年8月『ことばの毒』を出版。アマゾン、その他の書店で発売中。

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